■文部科学省関連の働き方改革について
■文部科学省関連の働き方改革について
(働き方ブログ)
みなさま、こんにちは。
みなさまの身近な学校の教員の働き方や大学教授等の専門職の働き方は、文部科学省の関連法制をふまえて一般的な企業の働き方改革に対応した労働法制を一部読み替える必要がある場合があります。
ここでは、教職員給与特別措置法(特給法)と、大学の教員等の任期に関する法律(任期法)について、概略を見ておきましょう。
1・教職員給与特別措置法(特給法)について
文部科学省の諮問機関である、中央教育審議会 > 初等中等教育分科会 > 質の高い教師の確保特別部会は、「令和の日本型学校教育」を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)を公開し、2024/6/14からパブリックコメントを実施しています。
審議のまとめのポイントは、中央教育審議会「審議のまとめ」の考え方資料にあるとおりですが、若者の「教員離れ」が懸念される中、若手教員の負担を軽減するため、サポート体制の強化を提言しています。これらの取り組みにより、長時間労働を是正して、残業時間を月20時間まで減らす目標も掲げています。
この背景には、少子高齢化の人口構造を受けて1970年代に採用された教員の定年退職に伴う若手教員の採用が増えていますが、一方で精神疾患による休職者数が全国で過去最高の6,539人と増えてきていて、特に20代の増加が顕著となっています。
総合対策では、勤務間インターバルの推進なども盛り込まれており、これから文部科学省が策定する予定の工程表により各教育委員会毎に業務の改善状況や残業時間の公表を求めていくこととなります。
この総合対策では、もう一点、教員の処遇改善策も示されており、教職員給与特別措置法(特給法)で定められている「教職調整額」を現行の基本給の4%上乗せして支給するとの規定を、10%以上上乗せに引き上げることが示されています。政府の2024年の経済財政運営の基本方針「骨太の方針」でも、「教職調整額」10%以上への引き上げが明記されました。
現行法の教職員給与特別措置法(特給法)の残業代を支払わない枠組みは維持されることとなっているため、みなし残業の考え方からの改革は、引き続き今後の検討に委ねられることとなっています。
2・大学の教員等の任期に関する法律(任期法)について
大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例については、いくつかの法律が関係しています。
労働契約法の改正により、有期労働契約の濫⽤的な利⽤を抑制し労働者の雇⽤の安定を図ることを目的とした「無期転換ルール」が平成25年4月から導入されています。
一方、研究開発能⼒の強化及び教育研究の活性化等の観点から「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能⼒の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び⼤学の教員等の任期に関する法律の⼀部を改正する法律」(平成25年法律第99号)が平成25年12月13日に公布され、大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間(原則)5年を10年とする特例が設けられました(平成26年4月1日施行)
しかしながら、無期転換申込権発生までの期間(原則)5年を10年とする特例であって、10年を超える有期労働契約を締結した場合は無期転換申込権が発生することに変わりはありません。
そのため、令和6年4月1日から施行の労働基準法施行規則改正に正しく対応して、有期契約労働者に対する明示事項等として新たに追加された事項を通知するともに納得性のある説明ができるよう準備していただく必要があります。
当事務所では、相談顧問契約を結んでいただいた教育機関のみなさまと、教員を含む多様な働き方のご相談にも対応させていただいえおります。
また、特殊なご事情を抱えておられるケースについては、大学専門の労務相談窓口もご紹介させていただきます。
どうぞ安心してご相談ください。
2024年6月28日
小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉
(参考)
・教職員給与特別措置法(特給法)
・給特法の改正論議 教育新聞 2024/3/12
・中央教育審議会 > 初等中等教育分科会 > 質の高い教師の確保特別部会 文部科学省
・「令和の日本型学校教育」を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)【概要】 文部科学省 2024/5/24
・中央教育審議会「審議のまとめ」の考え方 文部科学省 2024/5/24
・教員等 に対する労働契約法の特例について 厚生労働省
・無期転換ルールについて 厚生労働省
・令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます 厚生労働省 (パンフレット)