■働く高年齢者の安全と健康を守ろう
■働く高年齢者の安全と健康を守ろう
(働き方ブログ)
みなさま、こんにちは。
人生100年時代を迎えて、2022年時点で雇用者全体に占める60歳以上の割合は20%近くに達しつつあります。
それにつれて職場での高年齢者の労働災害が増えてきており、労働災害による休業4日以上の死傷者数の約13万5,000人のうち、30%弱を60歳以上が占める状況になっています。
ここでは、高年齢者の労働災害増加に対応するため、厚生労働省が2020年に策定した「エイジフレンドリーガイドライン」の内容と企業による取り組み事例を確認しておきましょう。
まず、働く高年齢者の労働災害の現状を見てみましょう。
(1)働く人の5人に1人、労災死傷者数の30%弱が60歳以上
60歳以上の働く人は、2022年には18.4%と、ほぼ5人に1人となりました。
これに伴って、労働災害(以下、労災)による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合も増加し、30%近くへと倍増しています。
(2)60歳以上の労災発生率は30代と比べ男性2倍、女性4倍
2023年の「働く人1,000人当たりの労災発生率」を見ると、最も低い30~34歳の男性1.93人、同女性0.98人に対して、60~64歳は男女とも3.5人以上、65歳以上では男女とも4人を超えています。
また、「労災による休業見込み期間」も、年齢が上がるに従い長くなる傾向を示しています。
(3)男性は「墜落・転落」防止、女性は「転倒」防止が急務
高年齢者の労災について、どのようなものが多いのかを見てみると、男性では脚立などからの「墜落・転落」の発生率が高く、60歳以上の働く人1,000人当たりの労災発生率0.91人は20代の約3.5倍です。
女性では「転倒による骨折等」の発生率が高く、60歳以上の働く人1,000人当たりの労災発生率2.41人は何と20代の約15.1倍です。
転倒や墜落・転落の防止対策は特に重要な課題となっていることがわかります。
では続いて、高年齢労働者の安全と健康確保のための「エイジフレンドリーガイドライン」について見ていきましょう。
エイジフレンドリーガイドラインでは、職場における高年齢労働者の身体機能の低下などを要因とする労働災害のリスクの評価を行い、そのリスクを低減させるための対策、すなわち身体機能の低下を補うような対策(照度の確保、通路の段差解消、重量物取り扱い作業や介護作業における補助機械(リフト等)の導入など)の実施を求めています。
あわせて体力チェックの実施などで、「転びやすくなっている」など労働者ご自身の体力の状況を「見える化」していくことなども求めています。
例えば、飲食店を経営する株式会社サッポロライオンでは、労働環境の整備だけでなく、高年齢労働者が元気に長く働き続けられる環境の整備のために保健師による健康チェックとフォローアップに取り組んでこられています。
しかしながら、2022年のアンケート調査では、エイジフレンドリーガイドラインを「知っている」と答えた事業所は17.9%とまだまだ少なく、さらに、そのうち「対策を行っている」ところは約6割で、全体の11%に過ぎません。
みなさまの企業で実質的な対策の促進を図る助けとなるよう、厚生労働省ではエイジフレンドリー補助金を設けて、高年齢労働者の身体機能の低下を補うための対策、高年齢労働者にとって危険な場所、負担の大きい作業を解消する工事や設備の購入対策の補助を行っています(2分の1、上限100万円)。
2024年度からはこの補助金に新しいコースが設けられ、労働者の転倒防止のための、専門家などによる労働者への身体機能チェックと運動指導への補助を始めています。
職場での転倒による骨折事故は「何もないところでつまずく」や「足が上がらない、もつれる」ことが原因となるもののほうが多くなっており、若いうちから運動により身体機能を維持していくことが重要となっています。
健康のためだけでなく、職場や日常生活での怪我の防止のためにも、高年齢になってからではなく、若いうちから意識して運動に取り組み、筋力や体力を維持していくことが重要ですね。
当事務所では、70歳雇用推進プランナーとして定年制度を始め高年齢者がいきいきと働き続けられる職場作りのお手伝いをさせて頂いております。
どうぞ安心してご相談ください。
2024年8月5日
小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉
(参考)
・厚生労働省 労働災害統計
・厚生労働省 令和5年の労働災害発生状況を公表
・厚生労働省 エイジフレンドリーガイドライン
・厚生労働省 SAFEコンソーシアム アワード
・株式会社サッポロライオン 取り組み事例
・厚生労働省 エイジフレンドリー補助金
(補助金申請受付期間 令和6年5月7日(火)から令和6年10月31日(木)まで)
・労働安全衛生総合研究事業 転倒・腰痛予防!「いきいき健康体操」