■労働時間を適正に把握しましょう

■労働時間を適正に把握しましょう
(働き方ブログ)

みなさま、こんにちは。
厚生労働省では、2024年9月に新しいリーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」を作成しました。
このリーフレットでは、労働時間の端数処理について、労働基準法違反となる取扱いを紹介しているほか、労働時間とはどのような時間で、適正に把握するために講ずべき措置についても説明しています。
ここでは、その背景を踏まえた対応について考えてみましょう。

労働時間の把握の在り方については、1分単位での賃金の支払いが必要とされています。
このリーフレットでは、労働時間は毎日適正に把握してそれに基づいて賃金を計算し支払うことを基本として、日ごとに一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨ててその分の賃金を支払わないことは労働基準法違反となると、改めて確認しています。
なお、1ヶ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは、労働者の不利となるものではないことから、事務簡便を目的としたものとして認められます。
また、1日の労働時間について、一定時間に満たない時間を切り上げた上で、その分の賃金を支払うことは、問題ありません。

このような再徹底が行われる背景を考えてみると、まだまだ労働時間把握の取扱いについて、正しい理解が進んでいないケースがあるからと考えられます。
■労基法違反の例ー1
勤怠管理システムの端数処理機能を使って、日ごとに労働時間を切り捨てているケース。
■労基法違反の例ー2
一定時間以上でしか残業申請を認めないケース。
■労基法違反の例ー3
始業前・終業後の作業を労働時間と認めていないケース。
など

労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインでも、[労働時間の考え方]と[労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置]が示されています。

[労働時間の考え方]
○ 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること
○ 例えば、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当すること

[労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置]
○ 使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること
(1) 原則的な方法
・ 使用者が、自ら現認することにより確認すること
・ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
(2) やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
① 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
② 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
③ 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること
○ 賃金台帳の適正な調製
使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと

労働時間の把握と賃金の支払いが適正であるかは、このタイミングで再度確認しておきたいものです。
みなさまの事業所での取り組みは、いかがでしたでしょうか。

当事務所では、経営労務監査などを通じて適正な法令順守の点検とともに、制度運用の改善提案を行っております。
社員の笑顔溢れる職場作りを、ご一緒に進めてまいりましょう。

2024年10月19日

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉

(参考)
労働基準関係リーフレット 厚生労働省

「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」 厚生労働省

労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 厚生労働省