■介護休業の取得要件の見直しの方向性について

■介護休業の取得要件の見直しの方向性について
(働き方ブログ)

みなさま、こんにちは。
介護休業を取得する必要が生じる状況は、予告なくやってきます。
介護休業の取得要件の一つでもある重要な基準である「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」について、見直しの方向性が報告書として公開されましたので見ておきましょう。

まず介護休業のあらましを見ておきましょう。
介護休業は、仕事と介護の両立のために要介護状態にある対象家族を介護するための休業で、最大93日間取得できます。
実施には介護は長期間におよびますので、介護休業期間は実質的には対象家族を介護する準備にあたる期間ともいえるでしょう。
育児・介護休業法の第2条では「要介護状態」について、「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」とされています。

介護休業等の対象となるか否かを判断する現行の「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」については、2024年4月施行の改正育児・介護休業法の附帯決議がついています。
この付帯決議では、子に障害のある場合や医療的ケアを必要とする場合には解釈が難しいケースも考え得ることから、早急に見直すこととされていました。

厚生労働省 介護休業制度等における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直しに関する研究会では、2024年12月から研究会で検討がなされ、このたび報告書が公表されました。
同研究会が示した新たな判断基準では、その対象として、障害児(者)や医療的ケア児(者)を介護・支援する場合を含むことを明記するとともに、判断項目に、「危険回避ができない」(従来の項目8に追加)、「認知・行動上の課題」(従来の項目10に追加)など、発達障害等を含む障害児(者)を想定した記載が追加されています。

まず、対象範囲の明確化のポイントです。
・障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合も、要件を満たせば介護休業等を利用できることを明示
・ただし、乳幼児の通常の成育過程で必要な世話は対象外

次に、判断基準の見直しのポイントです。
・2つの基準は維持しつつ、表現の適正化が図られました。
(1) 項目1~12のうち、状態について「2」が2つ以上または「3」が1つ以上該当し、その状態が継続することが認められること
(2) 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること

今後の法改正に向けた準備としては、企業は新基準を踏まえて、就業規則や介護休業制度の規定を更新する必要があります。
特に「要介護状態」の定義を明確化して新基準に適合した内容に変更することで、従業員が介護休業を適切に取得できるようにすることが大切です。
そして、従業員に対しては、新基準の内容を広く周知して介護休業が適用される範囲を正しく理解してもらう必要があります。
特に、対象となる家族の範囲や、障害児・医療的ケア児の介護も含まれる点を明示することで、従業員が適切に制度を利用できるように周知を行うことが大切です。

当事務所では、両立支援コーディネーター、障害年金専門社労士として、仕事と治療の両立支援、仕事と介護の両立支援のお手伝いをさせていただいております。
どうぞ安心してご相談ください。

2025年2月13日

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉

(参考)
育児・介護休業法のあらまし(令和6年1月作成)

常時介護を必要とする状態に関する判断基準

介護休業制度のあらまし

介護休業制度等における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直しに関する研究会報告書 2025年1月28日 厚生労働省 雇用環境・均等局職業生活両立課

・厚生労働省 介護休業制度等における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直しに関する研究会