■新しい資本主義2025年改訂版の狙い
■新しい資本主義2025年改訂版の狙い
(働き方ブログ)
みなさま、こんにちは。
2021年(令和3年)10月に「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、内閣に「新しい資本主義実現本部」が設置されました。
毎年、新しい資本主義の実現に向けたビジョンを示し、その具体化を進めるため、新しい資本主義実現会議を開催し、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」を発表しています。
閣議決定(2025年(令和7年)6月13日)された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」では、どのようなことが目指されているか、見ておきましょう。
賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現を目指して、いくつかの柱となる取り組みが示されています。
Ⅰ.賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現
2025年10月をめどにすべての都道府県で初めて1000円を超えてきています。
このグランドデザインの中では、2029年度までの5年間で、持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着させることが示されています。
そのために実行計画として取り組むこととしては、次の点があげられています。
・「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の実行を通じた中小企業・小規模事業者の経営変革の後押しと賃上げ環境の整備
・投資立国の実現
・スタートアップ育成と科学技術・イノベーション力の強化
・人への投資・多様な人材の活躍推進
・資産運用立国の取組の深化
・地方経済の高度化
等に、官民が連携して取り組む。
Ⅱ.中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画の推進
何といっても、日本の雇用の7割を占める中小企業・小規模事業者の経営変革の後押しと賃上げ環境の整備を進めることが大切です。
そのために実行計画として取り組みこととしては、次の3点があげられています。
1.生産性向上投資
2.価格転嫁・取引適正化
3.事業承継・M&A
4.地域で活躍する人材の育成・処遇改善
5.最低賃金の引上げ
Ⅲ.投資立国の実現
投資といえば、PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)と政府系ファンド(SWF)とがあります。
成長投資の強化のために、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のオルタナティブ投資の着実な推進や、大学基金の運用の高度化等があげられています。
また、将来は政府系ファンド(SWF)を充実し、国家予算を生み出す力も期待したいところです。
Ⅳ.「スタートアップ育成5か年計画」の強化
スタートアップ企業は25,000社と裾野は拡大しつつあるものの、我が国のユニコーン企業数は現在8社にとどまるなど、その競争力確保には課題解決が必要となっています。
Ⅴ.科学技術・イノベーション力の強化
成城著しいAIサービスやデジタルコンテンツ等のデジタル関連サービスの海外展開を促すことが示されていますが、日本発といえる科学技術を生み出す力を集積するためには、大学改革も必要となるでしょう。
Ⅵ.人への投資・多様な人材の活躍推進
社労士としては、この施策の柱に注目しています。
1 三位一体の労働市場改革(リ・スキリング、ジョブ型人事、労働移動円滑化)に加速して取り組むとともに、副業・兼業の推進や同一労働同一賃金制の施行徹底も含め、多様な人材の活躍推進を進める。
2 社内外のスキル・賃金水準の可視化と効果的な情報提供、幹部候補人材の育成の仕組みの構築
3 働き方改革関連法施行後5年を踏まえた働き方改革の総点検
4 GX・DXによる就業構造変化の中での地方の産業人材の育成(産業人材育成プラン)等
Ⅶ.資産運用立国の取組の深化
全世代の国民が金融リテラシーを向上させるための金融教育への取り組みは、始まったばかり。
会社員の時代に、ライフプラン研修などを通じて、資産運用のスキルも獲得していただきたいですね。
Ⅷ.地方経済の高度化
イノベーション拠点の強化があげられていますが、いくつかの成功モデルにはその中核となるキーマンがいました。
次の成功モデルにはイノベーションのキーマンの発掘・育成も必要となるのではないでしょうか。
Ⅸ.新しい資本主義実現に向けた取組の確実な推進
実行計画について定期的な改定ルールを設け、足元の物価上昇に的確に対応できるような仕組みづくりを行うとされています。
内外の不確定要因により国民生活は可処分所得が減少する一方で、年金生活者を含めて社会全体の再配分もしっかりと仕組み化が求められる時代に入っていると考えます。
2025年9月30日
小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉
(参考)
・内閣官房 新しい資本主義実現本部