■年金制度改革(遺族厚生年金の男女差の解消)について
■年金制度改革(遺族厚生年金の男女差の解消)について
(年金ブログ)
みなさま、こんにちは。
5年ごとの公的年金の2024年財政検証を受けて、2025年に年金制度改革法が成立しました。
ここでは、年金制度改革法の中から、いくつか特徴のある改正点を見ていきましょう。
ここでは、遺族厚生年金の男女差の解消についてみてみましょう。
2028年4月から段階的に改正法が施行されますが、現在すでに受給されている方や18歳未満の子どもがいる方などは、従来通り変更ありません。
いくつかの見直しが行われています。

はじめに、遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入していた被保険者が亡くなった際に、その遺族の生活を保障するための公的年金制度で、遺族の生活の安定と自立を支援することを目的としています。
日本の遺族年金は、主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類に分かれています

「遺族基礎年金」は大きくは改正されていませんので、ほぼ従来通り、亡くなられた方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」に支給されます。
この場合の「子」の要件は、18歳になった年度の3月31日までのお子様、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態のお子様です。
また、子どもに対する遺族基礎年金が、子ども自らの選択によらない事情によって支給停止されないようになります。これは、生計を同じくする父又は母があることによる支給停止規定を廃止するもので、遺族厚生年金と同じ取り扱いとなります。
さらに、遺族基礎年金の「こどもがいる場合の加算額」は増額(年間約23.5万円→28万円)となります。

次に、「遺族厚生年金」は、現行制度では、残された妻が30歳以上での死別の場合は生涯受給できますが、30歳未満での死別の場合は5年の有期給付で、さらに夫の場合は55歳以上しか受給権がありません。
これが最近の女性の就業率の向上などを踏まえて改正され、18歳未満の子どもがいない60歳未満の夫妻の年齢条件を同じにして、受け取り期間を原則5年にそろえることとなります。
有期給付の額は新たに加算(有期給付加算)が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。

ただし、遺族が十分な生活再建に至っていない場合など、配慮が必要な場合には5年目以降も最長65歳まで受け取れるようになります。
具体的には、5年間の有期給付の終了後も、障害状態にある方(障害年金受給権者)や、収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給することができます(継続給付)。
例えば、単身の場合は、就労収入が月額約10万円(年間122万円(※))以下の方は、継続給付が全額支給されます。収入が増加するにつれて収入と年金の合計額が緩やかに増加するよう年金額が調整されるしくみとなります。遺族厚生年金の年金額にもよりますが、概ね月額20~30万円を超えると、継続給付は全額支給停止されます。
また、亡くなった配偶者の厚生年金記録を分割して遺族の記録に上乗せする制度も創設されて、遺族の年金額を増やす仕組みが設けられます。

このほか、子どもを養育している年金受給者(すでに年金を受け取っている方)の年金額を加算する対象となる年金制度が拡充される予定です。
(子どもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付+継続給付の対象となります。)

遺族厚生年金は、伴侶や親なきあとの人生の生活再建へのセイフティーネットとして、男性にも女性にもそして子どもにも安心できる仕組みとして定着していくことが期待されます。
当事務所は、障害年金相談室を開設しております。
どうぞ安心してご相談ください。
2025年10月22日
小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉
(参考)
・第25回社会保障審議会年金部会資料 2025年6月30日 厚生労働省
・将来の公的年金の財政見通し(財政検証) 厚生労働省
・年金制度改正法が成立しました 厚生労働省
・遺族厚生年金の見直しについて 厚生労働省
・遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方 厚生労働省
・遺族厚生年金の見直し 朝日新聞
・遺族厚生年金パンフレット 日本年金機構
・遺族厚生年金の現行制度 厚生労働省