■改正「同一労働同一賃金ガイドライン」施行に向けて
■改正「同一労働同一賃金ガイドライン」施行に向けて
(働き方ブログ)
みなさま、こんにちは。
2026年4月28日に改正パートタイム・有期雇用労働法施行規則、改正雇用管理指針とともに、改正同一労働同一賃金ガイドラインが公布され、2026年10月1日から適用されます。
改正の背景と施行後の対応について押さえておきましょう。
同一労働同一賃金ガイドラインの主な改正ポイントは、次の7点です。
・ガイドラインに記載されていなかった諸手当等(賞与・退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、福利厚生施設、病気休職、夏季冬季休暇、褒賞)の判例の解釈を記載(ガイドライン)
・「正社員人材確保」の目的がある場合も客観的・具体的な実態に照らして判断すべきことを記載(ガイドライン)
・通常の労働者の待遇引き下げによらない待遇の相違の解消が求められることを記載(ガイドライン)
・パートタイム・有期雇用労働法8条の「その他の事情」の明確化(ガイドライン)
・無期雇用フルタイム労働者など無期転換社員もガイドラインの趣旨が考慮されるべきことを明確化(ガイドライン)
・雇い入れ時の労働条件明示事項に「待遇の相違等に関する説明を求めることができる」旨の追加(パートタイム・有期雇用労働法施行規則)
・雇用管理の改善等に関する措置等の指針(雇用管理指針)の改正(告示)
改正の背景は、同一労働同一賃金の施行から5年が経過したことを踏まえ、2025年2月から同一労働同一賃金部会で見直しに向けた議論が行われ、同一労働同一賃金ガイドラインを含む省令・指針が改正されることとなり、2026年4月28日に公布、2026年10月1日から施行・適用されるものです。
同時に、労働条件通知書も見直しをされ、「待遇の相違等に関する説明を求めることができる旨」(次の窓口に対して通常の労働者との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。)の通知が義務化されます。
パートタイム・有期雇用労働法8条、および派遣法30条の3第1項では、通常の労働者と非正規雇用労働者との間の基本給、賞与その他の待遇さの不合理性について、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事業のうち、「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適当と認められるものを考慮して」判断されるべき旨が規定されています。
この法の規定を踏まえ、改正「同一労働同一賃金ガイドライン」では、「第1 目的」に「この指針に基づき、客観的及び具体的な実態に照らして対応することが求められる。」ことが明記されました。
基本給だけでなく各賃金や手当について、それぞれ説明を求められた時の実態に基づく対応が必要となります。
また、これまで各判例で実態に基づく判断がなされる際に考慮される「その他の事情」について明確化されています。
第3 短時間・有期雇用労働者 (注)1 (および、おおむね同じ内容で、第4 派遣労働者 (注)1)
具体的には、次の各事項を内容とするとされます。
(ア)パートタイム・有期雇用労働法8条の「その他の事情」は、職務の内容、職務の内容および配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではないこと
(イ)「その他の事情」としては、職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、事業主と労働組合や過半数代表者などとの間の交渉といった労使交渉の経緯や結果などの諸事情が想定され、考慮すべき事情があるときに考慮すべきものであること
(ウ)事業主がパートタイム・有期雇用労働法14条2項の規定に基づき正社員と非正規社員との間の待遇さの内容・理由について十分な説明を行わなかった場合には、待遇さが不合理であることを基礎づける「その他の事情」として考慮され得ること
(エ)事業主が待遇の体系に係る議論において非正規社員の意向を十分に考慮せず一方的に非正規社員の待遇を決定した場合には、待遇さが不合理であることを基礎づける「その他の事情」として考慮され得ること
「その他の事情」としてどのようなものが考慮されるのかについては、長澤運輸事件(最判平30.6.1)が有名であるが、その後も多数の判例が出てきている。
最近の判例では、名古屋自動車学校事件(最判令5.7.20)は、正職員と嘱託職員(定年後継続雇用の有期雇用労働者)との間の基本給・賞与に関する待遇差について、労使交渉に関する事情を「その他の事情」として考慮するに当たって、「労働条件に係る合意の有無や内容といった労使交渉の結果のみならず、その具体的な経緯をも考慮すべき」としたうえで、原判決が労使交渉の結果のみに着目し具体的な経緯を勘案していないとして原判決を破棄・差戻しとしました。
そして、これを受けて差戻し後の高裁判決(名古屋高判令8.2.26)は、事業主と労働組合との間の具体的なやりとり(労働組合の要求内容やこれに対する事業主による回答・対応の内容など)を踏まえて、事業主の不誠実な対応によって嘱託職員の労働条件について具体的な協議が行われなかったとして、そのような事情も考慮したうえで正職員と嘱託職員との間の基本給・賞与に関する待遇差について判断を行いました。
正社員と非正規社員の待遇差の不合理性判断で考慮され得る「その他の事情」の範囲が改正同一労働同一賃金ガイドラインで明確にされたことは、不合理性を判断するうえで予測可能性を高めることに寄与し、労使双方にとって実務上有粋なものと考えられます。
なお、「その他の事情」として考慮され得る事情の範囲は、改正同一労働同一賃金ガイドラインに明記された事項に限られるものではありませんので留意が必要です。
2026年10月1日施行までに、各企業において各種賃金・手当などの処遇の際について再点検し、合理的な説明ができるよう準備を進めていく必要があります。
同時に、施行後の裁判においてどのような判例が積み重ねられていくかにも注目していく必要があります。
例えば、正社員の何%を下回る限りで不合理といった割合で不合理性判断が行われることが出てくるか、また正社員人材確保論によって正社員100対有期雇用0でも不合理とは認められない判断が維持されうるのかまたは部分的・割合的な不合理性判断が行われることが出てくるか、など今後の裁判所の判断の動向によっては、賃金制度の設計に影響が及ぶことも考えられます。
「同一労働同一賃金ガイドライン」は、今後も判例の積み重ねを経て改訂されることが想定されます。
基本給を含め各処遇の性質・目的について、どのような事実によりどのような性質・目的があると解釈されるのかなど、さらに具体的に整理されることも期待したい。
改正「同一労働同一賃金ガイドライン」は、定年前の社員(無期雇用契約)と定年後再雇用の社員(有期雇用契約)との間の均衡・均等待遇についても適用されます。
当事務所は、高齢・障害者雇用支援機構 70歳雇用推進プランナーとして、年間数十社の定年制度の制度改善のご支援を行っております。
同一労働同一賃金についても、どうぞ安心してご相談ください。
2026年7月30日
小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉
(参考)
・同一労働同一賃金ガイドラインの改正について(令和8年10月1日適用)
・リーフレット「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります」
・【全体版】同一労働同一賃金ガイドライン等の改正内容(パートタイム・有期雇用労働法関連)
・差戻し後の名古屋自動車学校事件(名古屋高判令8.2.26)
・高齢者雇用と均等待遇・均衡待遇について ~名古屋自動車学校事件を踏まえて~
・高齢・障害者雇用支援機構 70歳雇用推進プランナー