■中小企業の構造的な賃上げに向けた事業構造の整備を

■中小企業の構造的な賃上げに向けた事業構造の整備を
(働き方ブログ)

みなさま、こんにちは。
中小企業の事業環境は、サプライチェーンのスキームの中で発注元との関係性をふまえて、自社だけの努力で社員の処遇改善や人材獲得を推進することが難しい場合が多くあります。
ここでは、経済産業省の中小企業の賃上げ推進政策から、2024年度の中小企業の処遇改善のヒントを考えてみましょう。

まず、政府による中小企業の賃上げに向けた各種支援施策の柱の一つは、各種補助金や助成金の拡充です。
社会保険労務士がご支援できる厚生労働省の助成金としては、例えば、賃上げと設備投資を行う中小企業を支援する「業務改善助成金」があります。
この業務改善助成金は、事業場内で最も低い水準の賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資など生産性向上への取り組みを行う中小企業に費用の一部を助成するものです。

しかしこれからは「構造的な賃上げ」を実現するため事業構造を整備していくことが必要となります。
政府も、適正な価格転嫁・取引環境の改善に向けた取り組みを始めました
その取り組みの一つが、労務費の適切な価格転嫁のための指針の作成、公表・徹底です。
まず2023年に内閣官房と公正取引委員会が、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定しました。
この指針は、業界ごとの労務費に係る実態を調査・把握し、値上げ要請のタイミングや考え方、労務費転嫁に係る定期的な協議の場の設置、受注者側の根拠資料、発注側の対応といった、労務費の転嫁の在り方について「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」として策定したものです。

そして2024年には、経済産業省が動き始め、「下請中小企業振興法」に基づき企業間の取引適正化を促す「振興基準」を改訂しました。
この「振興基準」は、大手企業など発注側と中小企業など受注側の望ましい取引関係を定めたもので、努力すべき取り組みや行動の指針を規定しています。
これにより、各省庁が所管する業界の企業を指導・助言する根拠となる基準ができたわけです。
また経済産業省は、同時に今回の進行基準改定に併せて、原材料高に見合う価格転嫁を発注側に約束させる「パートナーシップ構築宣言」のひな形にも、これらの内容を反映しました。

当事務所では、「業務改善助成金」を活用した業務改善や最低賃金改定対応をはじめ、人材獲得に向けた魅力ある賃金制度の設計のご支援を行っています。
中小企業を取り巻く事業環境の整備と歩調を合わせて、魅力ある人事制度の構築へご一緒に取り組んでまいりましょう。

2024年4月8日

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉

(参考)
中小企業の賃上げを支援 公明新聞 2023年2月12日

中小企業等の賃上げ応援トータルプラン 公明新聞 2023年10月14日

中小企業等の活力向上に関する現状・課題と今後の取組について 首相官邸 2024/01/18

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針 内閣官房・公正取引委員会 2023年11月29日

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針について 内閣官房・公正取引委員会 2024年2月

下請中小企業振興法 振興基準 中小企業庁

パートナーシップ構築宣言のひな形 経済産業省

令和6年度業務改善助成金のご案内 厚生労働省