■労災認定基準が改訂されました

■労災認定基準が改訂されました
(労働法ブログ)

みなさま、こんにちは。
これまで長時間労働に起因する過労死を減少させようと、働き方改革への取り組みが国としても企業としても進められてきています。
しかしながら、実態として過労死につながりうる事故が起きた場合には、長時間労働だけでなく仕事の実態を踏まえた労災認定が求められてきました。

2021年9月15日から、厚生労働省は「脳・心臓疾患の労災認定基準」を改正しました。正式には、「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」といいます。
基準見直しの背景には、2020年度の脳・心臓疾患のうち残業時間が80時間未満で労災認定された事例が1割以下にとどまっているなど、残業時間のみで労災か否かが判断されやすいことが指摘されていたことなどがあります。

新しい基準は、残業時間が「過労死ライン」とされる月80時間に達しなくても、不規則な勤務や身体的負荷なども総合的に勘案し、より柔軟に労災を認定できるようにすることが主眼です。
また、新しい基準では過労死ラインに近い残業時間のほか、労働時間以外の負荷がある場合も発症との関連が強いと位置付けています。
具体的には、不規則な勤務として退社から次の出社までの時間の短さや、休日のない連続勤務などが新たな評価対象に加えられました。その他、激しい肉体労働などの身体的な負荷も考慮します。

また、最近の裁判所の判例では、心理的負荷による精神障害の労災認定基準の適用の実態についても基準の形式的な適用ではなく実態として心理的負荷の程度を「強」と修正すべきであると判断する例(国・福岡中央労基署長(新日本グラウト工業)事件、福岡地裁、令和3年3月12日判決)も出てきており、労災認定についてより実態を踏まえた認定を行うことが求められてきているといえます。

当事務所では、テレワークや柔軟な働き方の導入などを通じて過労死災害のない職場作りへのお手伝いをさせていただいております。
ご一緒に、社員の笑顔あふれる職場作りを進めてまいりましょう。

2021年9月16日

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
社会保険労務士 小林勝哉

(参考)

・厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました (令和3年9月14日、報道発表)

資料1 脳・心臓疾患の労災認定基準の改正概要
資料2 血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について
資料3 脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会報告書

・厚生労働省 血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準に係る運用上の留意点について (基補発0914第1号、令和3年9月14日)

・厚生労働省 心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました (令和2年5月29日、報道発表)