■令和5年度労働行政運営方針と実務対応

■令和5年度労働行政運営方針と実務対応
(働き方ブログ)

みなさま、こんにちは。
毎年4月に厚生労働省本省及び地方労働局において「労働行政運営方針」が発表されています。
ここでは、厚生労働省「令和5年度地方労働行政運営方針」を見てみましょう。

労働行政運営方針とは、その年度の労働行政を運営するにあたっての重点施策が示されたものです。
これにより、特に労働基準監督署が何を重点事項として定期監督などをはじめとした行政活動を行うのかがわかります。
またこの方針には年度ごとに特徴があります。長時間労働やメンタルヘルス対策、ハラスメント防止や非正規労働者に重点をおくなど、その変化を見ることで最近の労働問題とその対策の傾向を読み解くこともでき、企業における実務対策の検討にも大変に役立ちます。

国の労働環境の変化についての認識としては、少子高齢化・生産年齢人口の減少の構造課題が続くなか、成長と分配の好循環による持続可
能な経済社会の実現へ、人への投資を強化する必要があるとしています。
このため、労働者の賃上げ支援、個人の主体的なキャリア形成の促進、安心して挑戦でる労働市場の創造、多様な働き方の選択を支える環境整備等に取り組むことを労働行政運営の重要項目として掲げています。

このことからも、賃上げ支援がこの春の一番の課題となっていることがわかります。
このため、厚生労働省では「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージを更新しました.
この政策パッケージにより、意欲と能力に応じた「多様な働き方」や「賃金上昇」の好循環を実現していくため、中長期を見据えた雇用政策に力点を移して、これまでの「賃上げ支援」に加えて、「人材の育成・活性化を通じた賃上げ促進」「賃金上昇を伴う円滑な労働移動の支援」「雇用セーフティネットの再整備」の一体的、継続的な取組を引き続き推進していくとしています。

最も身近な、地域別最低賃金の目安額についても、大きく手が加えられようとしています。
現行の都道府県区分が4ランクであるところ、これを3ランクへ改定することとなります。
先般、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、目安制度の在り方に関する全員協議会で、地域別最低賃金の目安額を示す都道府県区分を現行のA~Dの4ランクからA~Cの3ランクへ改定することを決定しました。
現行4ランクへの振り分けは、各都道府県の経済実態を示す19の指標(所得・消費5指標、給与9指標、企業経営5指標)に基づき、東京を100とした総合指数を用いて検討・決定されています。
ランク数が多いと目安額に差を生じるとの考え方から、3ランクへ削減することが決定されました。
新しい3ランクへの都道府県の振り分けは下記のとおりです。
・新Aランク:6都府県(変更なし)
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
・新Bランク:28道府県
旧Bランク…茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、
兵庫、広島
旧Cランク…北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、
岡山、山口、徳島、香川、福岡
旧Dランク…福島、島根、愛媛
・新Cランク:13県(旧Dランクから移行)
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、
鹿児島、沖縄

最低賃金の改訂には、各企業における業務改善、生産性向上から、その取り組みが始まります。

当事務所では、法改正に対応した就業規則の点検・整備をはじめ、新たな働き方の基準を先取りできるようご支援させていただいております。
どうぞ安心してご相談ください。

2023年4月12日

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林 勝哉

(参考)
厚生労働省 「令和5年度地方労働行政運営方針」の策定について 2023/04/01

厚生労働省 「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージ 2023/04/11更新

厚生労働省 中央最低賃金審議会 中央最低賃金審議会目安制度の在り方に関する全員協議会報告 2023/04/06