■無期転換ルールと均衡を考慮した説明を

2023年8月2日

■無期転換ルールと均衡を考慮した説明を
(働き方ブログ)

みなさま、こんにちは。
厚生労働省は、2022年12月27日に、労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」を公表しました。
これを受けて、2024年4月1日から無期転換ルール及び労働契約関係の明確化に対応した労働条件明示のルールが改正されます。

ほぼすべての事業所で関係のある改正となりますので、準備のためにここでは5つのポイントを見ておきましょう。

(1) 就業場所・業務の変更の範囲の明示
すべての労働者について、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加えて、これらの「変更の範囲」についても明示が必要となります。
変更の範囲とは、将来の配置転換などによって変わりうる就業場所・業務の範囲を指します。

(2)更新上限の明示
有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、通算契約期間または更新回数の上限の有無と内容の明示が必要となります。

(3) 更新上限を新設・短縮する場合の説明
① 最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合
② 最初の契約締結の際に設けていた更新上限を短縮する場合
これら2つのいずれかの場合は、あらかじめ更新上限の新設・短縮する前のタイミングで、説明が必要となります。

(4) 無期転換申込機会の明示
「無期転換権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換申込機会の明示が必要となります。
「無期転換権」が発生する更新の際に一度だけではなく、その後の更新のたびに、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の提示が必要となりますので、注意が必要です。

(5) 均衡を考慮した事項の説明
「無期転換権」が発生する更新のタイミングごとに、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事故(業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めなければならなくなります。
これは労働契約法3条2項において「労働契約は労働者と使用者が就業の実態に応じて均衡を考慮しつつ締結又は変更すべきもの」とされているためです。

2024年4月1日からの改正は、「無期転換権」の発生のタイミングで、その会社で長く働く覚悟があるのか、労働者にとっても会社にとっても判断する一つの節目としての労働契約の締結のしかたを見直すものとなります。
さらに将来に向かっては、5年を節目に雇用継続への合理的期待があるとした従来の最高裁判決をもとにした労働契約法の考え方から、諸外国のように2年~3年でその判断の節目を設ける流れになっていくかもしれません。

また、正社員と有期雇用契約の社員との不合理な待遇差を禁止するパート・有期労働法8条は、フルタイムの無期転換後の従業員は適用外とされていますが、パート・有期労働法8条の趣旨からは、不合理な待遇が無期転換した従業員についても類推適用されるなどの判断がなされる可能性も考えられます。
これから70歳就業確保措置の定着により60歳定年後再雇用で70歳まで10年間の再雇用期間も普及していくことを考えると、無期転換していく方も増えていくことが想定されます。
今後は、これら無期転換後の従業員の処遇が課題となっていくと想定されます。

当事務所では、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 70歳雇用推進プランナーとして高年齢者雇用に関する助言活動を行っております。
定年後再雇用制度をはじめ、無期転換ルールに関するご相談は、どうぞお気軽にお問合せ下さい。

2023年7月22日

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉

(参考)
・厚生労働省 労働政策審議会労働条件分科会報告「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」 2022年12月27日

・厚生労働省 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
令和4年度労働政策審議会労働条件分科会報告を踏まえた労働契約法制の見直しについて(無期転換ルール及び労働契約関係の明確化)
リーフレット
・省令 令和5年3月30日 厚生労働省令 第39号
・告示 令和5年3月30日 厚生労働省告示 第114号
・通達 令和5年3月30日 労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 70歳雇用推進プランナー

・厚生労働省 無期転換ルールのよくある質問(Q&A)