■公益通報者保護法と企業労務管理
■公益通報者保護法と企業労務管理
(働き方ブログ)
みなさま、こんにちは。
公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和7年法律第62号)が2025年6月4日に成立しました。
この法律は、2026年12月1日から施行されます。
各企業においても、これまでにない取り組みが求められていますので、しっかり準備を進めてまいりましょう。
まず、公益通報者保護法の一部を改正する法律の概要を見ておきましょう。
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(目的)
近年の事業者の公益通報への対応状況及び公益通報者の保護を巡る国内外の動向に鑑み、
①事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上、
②公益通報者の範囲拡大、
③公益通報を阻害する要因への対処、
④公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済を強化するための措置を講ずる。
1.事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上
・ 従事者指定義務に違反する事業者(常時使用する労働者の数が300人超に限る)に対し、現行法の指導・助言、勧告権限に加え、勧告に従わない場合の命令権及び命令違反時の刑事罰(30万円以下の罰金、両罰)を新設する。【第15条の2、第21条、第23条関係】
・ 上記事業者に対する現行法の報告徴収権限に加え、立入検査権限を新設するとともに、報告懈怠・虚偽報告、検査拒否に対する刑事罰(30万円以下の罰金、両罰)を新設する。【第16条、第21条、第23条関係】
・ 現行法の体制整備義務の例示として、労働者等に対する事業者の公益通報対応体制の周知義務を明示する。【第11条関係】
2.公益通報者の範囲拡大
・ 公益通報者の範囲に、事業者と業務委託関係にあるフリーランス(※1)及び業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスを追加し、公益通報を理由とする業務委託契約の解除その他不利益な取扱いを禁止する。【第2条、第5条関係】
※1 フリーランスの定義は、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」第2条を引用して規定。
3.公益通報を阻害する要因への対処
・ 事業者が、労働者等に対し、正当な理由がなく、公益通報をしない旨の合意をすることを求めること等によって公益通報を妨げる行為をすることを禁止し、これに違反してされた合意等の法律行為を無効とする。【第11条の2関係】
・ 事業者が、正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為をすることを禁止する。【第11条の3関係】
4.公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化
・ 通報後1年以内(※2)の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてされたものと推定する(民事訴訟上の立証責任転換)。【第3条関係】
※2 事業者が外部通報があったことを知って解雇又は懲戒をした場合は、事業者が知った日から1年以内。
・ 公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対し、直罰(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、両罰)を新設する。法人に対する法定刑を3,000万円以下の罰金とする。【第21条、第23条関係】
・ 公益通報を理由とする一般職の国家公務員等に対する不利益な取扱いを禁止し、これに違反して分限免職又は懲戒処分をした者に対し、直罰(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)を新設する。【第9条、第21条、第23条関係】
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公益通報者保護法の一部を改正する法律への対応にあたって、企業における主な留意点を、整理してみましょう。
・公益通報を理由とする不利益取扱いのうち、解雇・懲戒処分に刑事罰が導入。行為者個人には6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には3,000万円以下の罰金。処罰の対象は、実質的な意思決定をした者やそれに関与した者。
・公益通報から1年以内(または事業者が通報を知ってから1年以内)の解雇・懲戒処分は、裁判では公益通報を理由としたものと推定される。企業として「公益通報を理由とした解雇等ではない」ことの立証責任が生ずる。
・公益通報対応業務従事者(以下、従事者)の指定義務(常時使用する労働者の数が 300 人以下の事業者は努力義務)。消費者庁の執行権限が大幅に強化され、勧告に従わない場合は命令が発出され、命令違反や立入検査の拒否には刑事罰(30万円以下の罰金)。
・従事者には通報者を特定させる情報についての守秘義務が課される。違反には刑事罰(30万円以下の罰金)。
・特定受託業務従事者(フリーランス、契約終了後1年以内の者も含む)が新たに公益通報者の保護範囲に追加。フリーランスに対しても内部通報対応体制の周知義務がある。
・通報妨害行為(正当な理由なく、公益通報をしない旨の合意を求めることや、通報者を特定しようとする探索行為)の禁止。
・内部通報対応体制の周知義務の追加。300名超の企業では全従業員等(フリーランスを含む)に対する通報窓口の存在、利用方法、通報者保護の内容を明確に周知が必要。
これらの留意点に対応するために、各企業では次のような準備が必要となると考えられます。
・社内規定の全面改訂
通報者保護措置、フリーランスへの対応、通報者探索の禁止、周知方法等の明記が必要となると考えられます。
・全従業員への研修(管理者を含む)
特に刑事責任を問われる可能性があることを具体的に周知徹底することが必要となると考えられます。
・人事のエビデンスの管理
訴訟を想定して、懲戒事由を詳細に記録しておき、処分の必要性を客観的に説明できるようにしておくことが必要となると考えられます。・第三者の外部専門家との連携体制
利益相反や独立性確保の観点からも第三性のある専門家の関与を検討していくことを検討していくことが必要となると考えられます。
事業の発展に資するコンプライアンス体制の構築ととに、すべての社員の笑顔溢れる職場づくりを、ご一緒に進めてまいりましょう。
2026年3月25日
小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉
(参考)