■建設業における2024年問題とCCUS

■新しい時代の働き方_建設業とCCUS
(働き方ブログ)

みなさま、こんにちは。
2018年の働き方改革関連法による時間外労働の上限規制ですが、猶予期間が設けられていた建設業でも2024年4月1日以降は時間外労働の上限規制が原則適用されることとなっています。
また、新しい時代の働き方改革に向けて、厚生労働省では「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書に基づく労働法改正への議論も行われているところです。

ここでは、新しい時代の働き方について、建設業とCCUSとの関係を踏まえて見てみましょう。

現在の少子高齢化などによる人手不足の時代にあっては、法令順守はもちろんのこと、採用から育成のサイクルを踏まえた人事・労務管理が必要であることは言うまでもありません。
企業としては、市場や労働者から選ばれるような事業活動を行っていく必要があります。

2024年問題とは、一言でいえば2018年の働き方改革関連法によって建設業、自動車運転業務等に携わる労働者の労働時間に上限規制が適用されることにより生じる様々な事業活動への影響を意味しています。
上限規制は労働基準法で定められていますので、もし違反をすれば罰金や企業名の公表などの罰則が適用されることとなります。

厚生労働省の「建設業における時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」に、建設業における時間外労働の上限規制について詳しく説明されています。

(建設業における時間外労働の上限規制)
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・時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができません。
・臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、以下を守らなければなりません。

時間外労働が年720時間以内
時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月平均80時間以内
時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回が限度

・特別条項の有無に関わらず、1年を通して常に、時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満、2~6か月平均80時間以内にしなければなりません。
・建設の事業のうち、災害時における復旧及び復興の事業に限り、 令和6年4月1日以降も次の規定は適用されません。

時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月平均80時間以内

※年720時間の上限及び時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回が限度という規制は適用されます。
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建設業における労働時間の考え方についてのよくある質問としては、次のようなものがあります。
・Q1 手待ち時間は労働時間でしょうか。
A1 使用者の指示があった場合には即時に業務に就くことを求められていて、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(手待ち時間)は、労働時間にあたります。
・Q2 着替え、作業準備の時間は労働時間でしょうか。
A2 使用者の指示によって、就業を命じられた業務に必要な準備行為(例えば、着替え、作業開始前の朝礼、準備体操等)や業務終了後の業務に関連した後始末(例えば、清掃等)を事業場内で行う時間は、労働時間にあたります。
・Q3 安全教育の時間は労働時間でしょうか。
A3 参加することが業務上義務付けられている研修や教育訓練(例えば、新規入場者教育、KYミーティング等)を受講する時間は、労働時間にあたります。

ではここで、建設業を取り巻く現状と課題を見ていきましょう。

・建設業は、全産業平均と比較して年間360時間以上の長時間労働が行われています。(平均、月30時間、日1時間強の時間外労働)
・他産業では当たり前となっている週休2日もとれていない状況にあります。
・給与は建設業全体で上昇傾向にあるが、生産労働者(技能者)については、製造業と比べ低い水準にあります。
・賃金カーブのピーク時期が製造業よりも早く到来する傾向があり、現場の管理、後進の指導等のスキルが評価されていない可能性があります。

これらの建設業を取り巻く現状と課題を受けて、国土交通省では建設業働き方改革加速化プログラムを策定して総合的な改革に取り組んでいるところです。

こちらのプログラムの中でも、「建設キャリアアップシステム」(CCUS)と技能者の能力評価制度の構築に取り組むこととされています。
「建設キャリアアップシステム」(CCUS)は、技能者の資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積する仕組みで、
2023年度(令和5年度)には「あらゆる工事におけるCCUSの完全実装」を目指しており、この目標に向けて3つの具体策が示されています。
・建退協の運用をCCUSに完全移行
・社会保険加入確認のCCUS活用を原則化
・公共工事等でのCCUS活用を原則化

これらを踏まえて、建設業における2024年問題とこれからの働き方を振り返っておきましょう。

日本のインフラの多くは、老朽化や災害により維持修繕工事が年々増加することが見込まれています。
そして、2024年4月1日からの時間外上限規制の適用に続いて、2025年には建設業でもベテラン世代の大量退職による人手不足が発生すると予測されています。
また、建設業の許可事業者数も1999年の60万者から2021年前末には約47万者に減少してきています。

建設業界が抱えてきた6つの課題を再掲します。
・長時間労働と年間出勤日数の多さ
・若手の減少による業界の高齢化
・賃金水準の低さやマネジメント層の評価が低い傾向
・膨大な書類がありペーパーレス化も遅れ
・職人をはじめとする若手の人材育成の遅れ
・小規模事業所や一人親方の技能者も多くBPRしづらい

建設業における2024年問題とこれからの働き方のポイントをまとめます。
・建設業の魅力を伝える努力
・給与体系の改善
 CCUSの定着により、技能者の客観的な評価や給与待遇への反映、スキルアップ計画に活用も期待されます。
・労働環境の改善
 労災、特に一人親方等の保障が求められています。
・工期設定の適正化
・DXの推進

いかがでしたでしょうか。

当事務所では、ITx法律で価値創造をと、テレワーク専門社労士としてICT環境を含めた働き方の改革へのご提案をさせていただいております。
建設業における2024年問題を踏まえたこれからの働き方についても、ぜひお気軽にご相談ください。

2023年10月25日

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表
特定社会保険労務士 小林勝哉

(参考)
「新しい時代の働き方に関する研究会」報告書 2023年10月20日 厚生労働省

建設業における時間外労働の上限規制 わかりやすい解説 厚生労働省

建設業を取り巻く現状と課題 国土交通省

建設業働き方改革加速化プログラム 国土交通省

建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及と活用促進について 国土交通省

・建設キャリアアップシステム(CCUS)の概要 CCUSチャンネル