■働くすべての人に賃金の最低額を保証しよう
(労働法ブログ)
■働くすべての人に賃金の最低額を保証しよう
みなさま、こんにちは。
日本の労働政策から社会保障制度までフルカバーで考えている拠点が、厚生労働省です。
今日は、労働基準局にお邪魔して、賃金課の水島さん(副主任中央賃金指導官)と松浦さん(賃金・退職金制度係長)から、業務改善助成金事業の心について伺ってきました。
コロナ対策の本丸でもある厚生労働省のまわりは、年の瀬の慌ただしさを励ましてくれるかのように紅葉がきれいでした。
1・厚生労働省の目指すところ
中小企業のみなさまの生産性向上を図り、その成果をもって社員のみなさまの最低賃金を改善できるよう、支援を行いたい。
この背景には、政府の働き方改革関連法制定などの影響で、全国の加重平均で見ても最低賃金の上昇率が2倍になっており、早期に1,000円を目指すとの目標が設定されていることから、避けて通れない経営環境にあることが挙げられます。
また、東京都だけで見ると、最低賃金が1円動くと影響をうける労働者は、この10年で8倍に上昇しており、中小企業の経営に大きく影響するようになっていることも、挙げられます。
2・労働基準局 賃金課の手厚い制度設計
労働基準局 賃金課では、事業所のみなさまのお声を真摯に受け止めて、次のような手厚い支援制度に設計しておられます。
業務改善助成金は、最低賃金の改善と、業務改善の事業の実施の、2つの要件が必要です。
まず、助成率ですが、生産性要件を満たさなくとも、助成率が3/4から4/5と高いことが挙げられます。
次に、助成額ですが、企業毎ではなく、事業場毎に支給されることが挙げられます。例えば、東京都内で7店舗を展開する会社の場合ですと、30円の最低賃金改善コースでも合計700万円が、90円の最低賃金改善コースですと最大合計3150万円が、支給されることとなります。
3・幅広い業務改善が対象
業務改善助成金の要件の一つである生産性向上への業務改善事業は、企業の幅広い生産性向上への取り組みが対象です。
何か特別な最新設備の導入だけにこだわる必要はありません。
他社の事例を参考に業界で普及した手法や設備を導入することでOK、設備も買い替えして大型に入れ替えるだけでもOK、リース費用でも3月までの年度内支出分は対象にしてOK、システム導入の場合はソフトウェア費用や設置費も込み込みでOK、導線の変更や配置の変更といったちょっとした職場環境の改善もOK、コンサルタントに相談するだけでもOK、など、とても幅広い生産性向上への取り組みが対象となります。
業種別事例集が公開されていますので、ぜひ参考にしていただき、良い事例は積極的に活用していきましょう。
いかがですか?
みなさまも、このような支援制度を活用すれば、計画的に無理なく社員のみなさまの賃金を改善していけそうだなあ!と、お感じになられたことと思います。
留意事項としては、対象となる社員は必ずしも全社員ではなく最低賃金の改善の所定の幅に該当する社員のみが対象であることと、事業実施後6カ月経過後に状況報告も必要となること、くらいでしょうか。
毎年、7月頃には最低賃金の目安が公表されますので計画定期に申請準備を進めていき、8月の地域別最低賃金の決定を受けて申請すれば、年度末まで余裕をもった業務改善の事業を実施することができますよ。
当事務所では、これからも、厚生労働省の各種政策の心を、お伝えしていきたいと思います。
各種助成金の手続きだけでなく、その活用の心をふまえて、ご一緒に社員の笑顔あふれる職場をつくってまいりましょう。
(2020年12月17日)
小林勝哉社会保険労務士事務所 代表 小林勝哉
(参考)
(第3次補正予算で2021年2月1日から20円コース(新設)及び新たな30円コースを受付(予定))
★業種別事例集 (2017年度の制度に基づく事例)
製造業編
卸売業・小売業編
宿泊業・飲食サービス業編
生活関連サービス業・娯楽業編
医療・福祉編
・厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2018年賃金構造基本統計調査(一般労働者)