■雇用の維持へ出向制度の活用を

2021年5月13日

■雇用の維持へ出向制度の活用を

(労働法ブログ)

みなさま、こんにちは。

大切な社員のみなさまの雇用の維持のためには、事業の維持のために休業手当支給への支援制度の活用はもとより、積極的な在籍型出向の支援制度の活用の道もあります。

テレビドラマ化で社会現象にもなった池井戸潤氏の小説『半沢直樹』でも、出向が注目されています。

 

これまで唯一出向支援制度を手掛けてきた機関として、公益財団法人 産業雇用安定センターがあります。人材有効活用の観点から、失業なき労働移動を目指し、再就職・出向等を無料でご支援されています。

出向には、「在籍型出向」「移籍型出向」があります。「労働者派遣」とは異なります。出向の労使関係は当事者間の協議により決めていただくものであり実態により判断されます。

もともと在籍型出向のあっせんなどの業は労働者供給に該当し禁止(職業安定法第44条)されるものですが、関係会社やグループ企業内の人事交流などのための在籍出向は例外とされています。

すなわち、在籍出向のうち、①労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する. ②経営指導、技術指導の実施. ③職業能力開発の一環として行う. ④企業グループ内の人事交流の一環として行う. 等の目的を有しているもの等の目的を有しているものについては、出向が行為として形式的に繰り返し行われたとしても、社会通念上業として行われていると判断し得るものは少ないと考えらています。

公益財団法人 産業雇用安定センターでは、このような関係会社や企業グループでの人事交流制度の設計のご支援に取り組まれています。

このように、出向制度は、雇用シェア型社会への一ステップとしてグループの総合力の発揮への一助となるもののではないでしょうか。

 

厚生労働省でも、2020年度第三次補正予算により「産業雇用安定助成金」の創設が行われることとなりました。

「産業雇用安定助成金」は、労働者の雇用を在籍型出向により維持することを目的とする支援制度であり、労働者を送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して一定期間の助成を行う点が、これまでの雇用調整助成金が労働者を送り出す事業主のみを支援対象であった点と異なり拡充されています。

雇用維持を目的としていることから、出向した社員が一定期間の後に出向元の企業に還流することが前提となっています。このように、出向元事業主と出向先事業主が共同事業主として出向計画を策定しますが、出向元事業主が代表して申請し責任をもって人材還流まで見ていくこととなります。

動画による産業雇用安定助成金のポイント解説をご覧ください。

当事務所では、出向制度を含む配置転換命令に伴う判例を踏まえた労働契約内容のご相談にもご対応させていただいております。
お気軽に、ご相談ください。

2021年2月3日(2021年4月16日、2021年5月13日追記)

小林勝哉社会保険労務士事務所 代表 小林勝哉

 

(参考)

産業雇用安定センター

雇用を守る出向支援プログラム2020~ 在籍型出向制度のご案内~

労働者派遣と在籍型出向との差異

厚生労働省 確かめよう労働条件

「出向」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性

厚生労働省 出向制度について

産業雇用安定助成金

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000778433.pdf

産業雇用安定助成金リーフレット

産業雇用安定助成金ガイドブック

産業雇用安定助成金支給要領

産業雇用安定助成金FAQ

「産業雇用安定助成金」お問い合わせコールセンター

・電話番号 0120-60-3999
・受付時間 9:00~21:00(土日・祝日含む)

NHK 「在籍型出向」支援制度 約2か月で1700人余が利用 (2021年4月29日)

参考 産業雇用安定助成金(仮称)の創設の背景

参考 パンフレット 産業雇用安定助成金(仮称)の創設